自動車部品メーカーの脱炭素

政府が掲げるビジョン

各国政府が2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする目標を掲げています。そのビジョンは「カーボンニュートラル」。2020年にEUが策定した「欧州気候法案」は、2050年までのカーボンニュートラルを掲げていることが特徴です。日本もこれに追随しました。

日本では、カーボンニュートラルに対する取り組みに対して、補助金などの支援制度を用意。地方自治体単位での取り組みにも補助金があり、政府・自治体・民間事業者が一丸となって取り組むべき課題と位置付けていることが分かります。

「カーボンニュートラル」は、2021年11月に開催されたCOP26(国連気候変動枠組み条約締約国会議)のメインテーマにもなりました。その際おこなわれた「ゼロエミッション車」宣言では、2040年までに新車販売はすべて走行時にCO2を出さない車にすることを掲げ、23ヵ国と世界の大手自動車メーカー6社が署名しています。

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自動車部品メーカーの脱炭素への取り組み

「ゼロエミッション車」宣言には、日本政府と日系メーカーは署名を見送りました。しかし、部品メーカーでは海外向けの出荷も多いでしょう。カーボンニュートラルで先行する欧州メーカー向けの部品は、日本より環境に配慮した製品の製造が求められることになります。

日本国内で早急にカーボンニュートラルへの取り組みをする必要性に迫られているのは、自動車メーカーより自動車部品メーカーと言えるかもしれません。

カーボンニュートラルの実現には、車自体を電動化することはもちろん、環境に配慮した部品も大切です。そして、製品そのものだけではなく、製造工程全体に対する脱炭素への要請がより強まってくることが予想されます。工場の設備が稼働にあたってCO2を大量に排出していたのでは意味がありません。

カーボンニュートラルへの対応が不十分な部品メーカーは、自動車メーカーから部品の注文が取れなくなる可能性があります。

日本自動車部品工業会(部工会)は、2030年度目標として、CO2排出量の2007年比28.6%減を掲げました。2021年には「カーボンニュートラル対応部会」を発足し、意識の啓発を図っています。

様々なメーカーの取り組み事例

愛知県に本社を置くアイシンは、2025年までに電気自動車やハイブリッド車向けの部品製造を強化するため、2700億円を投資する旨を2021年11月に開催した投資家向けオンライン説明会にて発表しました。また、工場の脱炭素化にも力を入れるため、2030年までに1100億円を投資する予定です。

武蔵精密工業では、「インターナルカーボンプライシング」を投資判断に取り入れました。CO2排出量を費用に換算するシステムで「社内炭素価格制度」とも呼ばれています。

東海理化は、製品材料のCO2発生量に関するデータベースを構築し、2023年にも実用化する構えです。また、自動車メーカーとの連携で、バイオマス由来の樹脂など環境に優しい材料に換える取り組みも進めています。

ニッパツは2022年より、生産設備の導入に向けた稟議書にはCO2排出量の算定を必須としました。

愛三工業の「カーボンニュートラル推進部」の立ち上げに代表されるように、専任組織の立ち上げを行う企業も増えています。

メーカーによる部品メーカーへの要請も行われています。トヨタ自動車は主要部品メーカーに21年のCO2排出量を前年比3%減となるように要請。ホンダが部品メーカーに要請した目標は、25年度から19年度比で4%ずつの削減です。日産自動車でもサプライヤーとCO2削減に向けた課題を共有する取り組みをスタートしています。

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まとめ

欧州に牽引される形で、日本の自動車部品メーカーでも脱炭素の取り組みは不可欠となりました。政府も力を入れて取り組んでいる他、自動車メーカーも総力を挙げて取り組んでいるため、部品メーカーでも製造工程まで配慮しなければ受注がもらえなくなる可能性があります。生き残りをかけて、取り組むべき課題が脱炭素化と言えるでしょう。

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